大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)43号 判決

一 原告主張の発明につき、その出願から審決の成立及びその謄本の送達にいたるまでの特許庁における手続の経緯並びに右審決の理由の要点に関する請求原因事実は、当事者間に争いがない。

二 しかるに、特許庁における右手続の経緯によると、原告(審判請求人)は、特許庁が審理終結通知を発送した日の前日たる昭和四六年一二月六日、特許庁に本願明細書全文及び図面を訂正する手続補正書を提出したが、成立に争いのない甲第一号証の本件審決書に、審決の年月日として同月二七日との記載があり、また、その理由中に、「本願発明は、(中略)昭和三九年三月九日付、同年七月一一日付及び同年同月一四日付の各手続補正書によつて補正された明細書と図面からみて、電話交換機の中継方式に係るものと認める」との記載があるのに、昭和四六年一二月六日提出の右手続補正書を右認定の資料にした旨の記載がないうえ、「請求人は改めて補正明細書および図面を提出することを約し、(中略)(昭和四六年)一一月二五日に電話により督促したところ、一二月一日までに提出すると回答しながら、なおも請求人は補正明細書および図面の提出をおこなわなかつた。そこで改めて、本願明細書と図面の記載および上記拒絶理由を検討した」と記載され、ここでも同月六日提出の右手続補正書を審査の資料に供した旨の記載がないことに徴すると、右審決が同月六日原告から提出された右手続補正書を審査資料として、考慮に入れず、したがつてこれについて何ら判断を加えなかつたことは、毫も疑う余地がない。

思うに特許の出願人は、出願公告前には、いつでも出願の補正をすることができ(昭和四五年法律第九一号による改正前の特許法第一七条)、出願人に審理終結通知が到達する前に出願人から手続補正書が提出された場合には、当然これによつて補正された明細書及び図面を審理の対象とすべきものであるから、本件審決が、ただ右手続補正書による補正前の明細書及び図面について判断するに止まり、その補正後のものについて判断をしなかつたのは、結論に影響を及ぼすことのありうべき事項について判断を遺脱したものであつて、違法であるといわざるをえない。

被告は、右手続補正書によつても本願発明の明細書の不備は補われず、右審決の結論に影響がないから、右審決に違法はない旨を主張するが、成立に争いのない甲第二ないし第四号証、第五、第六号証の各一,二、第七ないし第一一号証、第一四号証、第一六号証の一、二によると、原告は、本願発明につき出願以来、本件審判請求の前後、三回にわたり特許庁審査官又は審判長から拒絶理由通知を受け、そのつど、特許庁に意見書、手続補正書等を提出したが、そのうち、最後の拒絶理由通知(なお、その理由は、本件審決がそのまま引用するところである。)に対して、提出したのが前段に掲げた手続補正書であり、そのような経緯があるところから、右書面によつて補正された明細書の記載には、従前のものと異るものがあることが認められ、これに対する判断如何によつて本件審決の結論が左右されないものとは云い切れないのみならず、右審決は、これについて何ら触れるところがなく、むしろ、実質上審理判断しなかつたものということができるから、本件訴訟において、右審決の判断しない右明細書の記載の適否にまで立入り、その結果によつて右審決の取消事由の存否を決するのは、妥当ではないと考えるので、被告の主張は、採用しない。

三 そうだとすれば、本件審決を違法であるとして、その取消を求める原告の本訴請求を、理由があるものとして認容する。

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